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コラム

2017.5.10 更新

小売業にとってのプレミアムフライデー

山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 理事

プライムフライデーが始まったが・・・
 本年2月より、プレミアムフライデーの取り組みが始まった。国が提唱する、働き方を変えていくきっかけや消費の活性化などの狙いをもつ消費者キャンペーンである。
 月末の金曜日は働き方を変えて15時で仕事を終わらせて、余暇を活用してもらうことが趣旨であるが、実際に導入している企業は多くはないようだ。月末の忙しい時期に早く帰ることなどできないというような声も聞こえてくる。また、せっかく始まったプレミアムフライデーの取り組みであるが、初回はマスコミでも大きく取り上げられて話題になったものの、3月は年度末、4月はゴールデンウイークと重なり、霞んでしまった感は否めない。

新たな需要の獲得に向けて
 では、小売業にとって、プレミアムフライデーはどう活用すべきだろうか。もともと月末の金曜日は多くの民間企業の給料日後の週末として販売機会が大きな日であるため、日販が高い店は多いと思われる。デイリー商品などの品揃えを強化し、売場でお客を迎える準備ができている店にとっては、さらなる売上向上を目指せる機会ととらえるべきだろう。
チェーンによっては、プレミアムフライデーをきっかけにより多くの需要を獲得する動きもみられる。たとえばローソンではプレミアムフライデー限定のパスタやスイーツを発売している。このように、この日に自分へのご褒美として普段は買わないちょっとした贅沢を促すことで客単価が増加し、話題性で顧客を店に呼び込んでいると思われる。

コト消費の訴求と従業員の参加
 消費者にいつもと違う行動をしてもらうためには、何かきっかけが必要である。今はモノが充足した時代であり、新たな需要創出のためにコト消費の訴求がもてはやされている。
プライムフライデーは、新たなコト消費を喚起するきっかけとして積極的に販売促進に取り入れるべきであろう。ただし、単なる特売ではなく、生活を豊かにするような、楽しく過ごせるような、非日常を味わえるコト消費を提案していきたい。
 現状では、単なる特売をしている店もあるようだが、それでは需要の先食いとなってしまい、新たな需要創出にはつながらない。スーパーのように日常の商品を販売する店においても工夫をすれば、結果は出るのではないだろうか。「どうせ、うちの店は」と思わずに、従業員も企画づくりに参加できるようにしたり、インセンティブを設けたりして、15時に帰ることができない働き手にとっても特別な日を演出していければ、なおよいのではないだろうか。

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